復讐鬼ヤプール


データ

脚本は上原正三。
監督は山際永三。

ストーリー

パトロール飛行をする北斗、南。
南はデートに誘ってくれない北斗に対し不満を漏らす。
すると空から隕石が地上へ落下。
2人は隕石だと安心して調査せずに基地へ帰る。
翌日、隕石落下現場付近で負傷者が発見された。
隕石から出てきた宇宙人にやられたと言う。
その宇宙人こそ異次元人ヤプールの最後の手段。
ヤプール人の1人が自ら乗り込んできたのだった。
TACはインベーダーの襲撃に備え警戒態勢に入る。
しかし宇宙仮面は金網を破り基地内に侵入。
発電所で2人の警備員を倒す。
爆弾をセットしたところでTACに発見され逃走。
その時北斗は腕のブレスレットを目撃する。
外へ逃げた宇宙仮面を美川、山中はパンサーで追跡。
しかし宇宙仮面は突如バイクを降りパンサーを念動力で崖下へ転落させた。
パンサーは炎上し、投げ出された山中は既に死んでいる美川を発見。
慌てて助けを呼びに行き、パンサーに乗っていた隊長らと合流し崖下へ行くが美川の姿はなかった。
その時今野から連絡が入り美川は病院へ収容されたと聞かされる。
隊員たちが病院へ駆けつけると、そこには元気な美川がいた。
そしてその場には長髪の青年が。
美川によると、その坂井という青年のおかげで命拾いしたと言う。
しかし坂井は宇宙仮面の仮の姿で超能力で美川を蘇生させたのであった。
1週間後、パトロール中の北斗、南は幼稚園で超獣の彫刻を作る坂井とそれを手伝う美川を目撃する。
近所の人の話によると、子供たちにせがまれて超獣の彫刻を作っていると言う。
美川に話を聞くと、美川は犬のぬいぐるみ(ブーアン)をもらったと大喜び。
北斗も坂井の手伝いを買って出るが、腕のブレスレットを見て不審を抱く。
それに気付いた坂井は子供達の蹴ってるボールを操り美川にぶつけ、その反動で脚立の上にいる北斗を転落させる。
基地に帰った北斗は美川にブレスレットのことを話すが、坂井を信じる美川は坂井はそんな人じゃないと反論する。
梶の提案で体の組成がわかるペンダントを坂井の首に掛けることに。
美川は坂井を信じて自らその役を買って出る。
幼稚園に戻った美川は坂井にペンダントをプレゼント。
坂井はそれを首に掛けた。
そこへ山中も手伝いに現われ、彫刻も遂に完成する。
その頃基地では梶の分析で坂井の体が特殊金属と合成樹脂で出来てることが判明。
TACは怪我をしてる北斗を残してすぐさま坂井のいる幼稚園に出動する。
幼稚園では坂井がそれを待ち構えていた。
TACが駆けつけると、自ら正体を現し超獣を巨大化させる。
アローの南は超獣をロケット弾で攻撃。
しかし歯が立たず、アローは墜落させられる。
それを基地で見ていた北斗は梶の制止を振り切って出動しようとするが、そこへ坂井が贈ったブーアンが銃弾を発射。
辛くもそれを避けた北斗はタックガンでブーアンを粉砕。
梶に見送られてアローで出撃した。
ブラックサタンはビルの屋上から宇宙仮面に操られ大暴れ。
TACは地上と空から攻撃するが全く歯が立たない。
そうこうしてる内、アローが撃墜された。
脱出する北斗。
その時2人のリングが光った。
地上にいた夕子は北斗の下へ走り寄り空中でエースに変身。
しかしエースはブラックサタンのパワーの前に大苦戦。
遂に倒したかと思っても宇宙仮面のリモートコントロールですぐに復活するなどなかなか倒せない。
苦戦するエースを見て、美川は意を決してビルの屋上へ行く。
そして屋上の宇宙仮面目がけて銃を発射。
宇宙仮面は炎に包まれ地上へ落下していった。
コントロールを失ったブラックサタンは急に動きが悪くなる。
エースはブラックサタンの体にタンクの石油を浴びせ、雷を発生させ 炎上させる。
とどめはメタリウム光線で大爆発。
仲間の下へ戻った南は傷心の美川を力づける。
戦い終わって引き上げる北斗と南は互いに微笑み合うのだった。

解説(建前)

隕石落下現場付近で負傷者が発見されたのは夜が明けてから。
夜の間宇宙仮面は付近に潜伏していたのだろうか。
負傷者が一晩放置されてたとすると、調査を怠った北斗、南の責任は重い。

異次元人のくせして隕石で宇宙からやってくるという手の込んだことをするヤプール。
ヤプールが地上に現れたのはこれが2回目だが、前回のカウラの時はすんなり地上に出没してたように思う。
もしかすると前回はただの僧侶に乗り移っただけで、今回のようにヤプール自身が乗り込んだのではないのかもしれない。
そう言えばバキシムもヤプールの変身ぽかったので(通説ではそうなってるようだ)、何かに乗り移ればすんなりこの世界に出現できるのかもしれない。
まあ単に宇宙仮面が宇宙帰りだっただけなのかもしれないが(宇宙生物を探しに行った帰りとか)。

宇宙仮面の狙いは一応TAC基地の破壊のようだ。
と言っても一度阻止されると後はほったらかしだったので、それほど重要ではなかったのかもしれない。
隊員たちを呼び出してもブラックサタンを巨大化させただけだし、特別な作戦はなかったように感じられた。

美川を利用したのは事の成り行きか。
全て作戦通りというのも無理があるのでそう考えるのが自然であろう。
屋上で撃ち落されたのはかなり迂闊だった。
エースとの対戦で我を忘れていたのだろうか。

バレバレタッチは空に飛んでるときは2人は異次元空間にいて見えなかったと解釈するしかない。
もちろん異次元空間と言っても色々あるので、ヤプールの住む世界とは別世界であろう。
第一話でウルトラ兄弟が出てきた場所がそれではないかと推測している。
もちろんあれはテレパシーかもしれないが、指輪を渡すことが出来たので地球とどこかで繋がっていたとも考えられる。
そういう空間でこそ変身という不可能なことを可能に出来るのだろう。

感想(本音)

内容たっぷりであらすじを書くのに苦労しました。
ヤプール来襲篇だけはありますね。
個人的にこれぞヒーロー物というシリアスな展開でかなり好きな話です。
さすが上原正三だけはありますね。

まず何と言っても夕子のセリフ、
「デートにだって誘ってくれたことないじゃないの」。
このセリフは脚本にあったのか、監督が書き加えたのか。
これは明らかに恋人同士を意識したセリフである。
こういう生々しいセリフはやはり上原氏だろうか。
何となく夕子と新マンのアキちゃんが被るようで、上原氏の女性観が感じられる(断定できないが)。
つまり女性は強い。
母性的なものに対する畏怖みたいなものか。
上原氏自身女性に振り回されるタイプだったのか、北斗と郷の女性に対する態度は何処か共通するところがある。

しかしこのセリフ以上に重要なのが、北斗の
「だって忙しいし」。
普通恋人同士じゃなきゃこういう言い訳はしない。
これは暗に北斗自身2人の関係を認めていることを証明している。
北斗がそう思ってなければもっと冗談として受け流していただろう。
弁解をする必要はあるまい。
上原氏が書いたのかわからないが非常に興味深いセリフだ。
あと、怪我をした北斗を支える夕子もいいシーンだった。

因みに上原氏の女性観にはもう1つ、健気さというのもある。
母性的な面と少女っぽい面。
そういうのを持ち合わせた人が理想なのだろうか。
因みに私の好みもそういう節があるので、実は上原氏の影響をもろに受けてるのかもしれない。
そう考えると、子供番組はやはり侮れないものだ。

しかし今回のヤプールは完全に宇宙人扱い(インベーダー呼ばわりされている)。
このことはヤプールが脚本家にとっても解釈不能な存在であることを示している。
設定を作った市川氏自身も人間のトラウマみたいなものと言っているし、正直あまり深く考えてなかったのではないか。
その辺りあるいは全滅させられた一因があるのかもしれない。

あっさり侵入されるTAC基地。
ほとんど警戒の意味をなしてないような。
美川が死んだとおたおたする山中。
案外こういうときは脆い。
信じてもらえない者の立場も少しはわかっただろう。

基地を襲うならブーアンに爆弾を仕掛ければいいと思うが。
というか宇宙仮面、意味不明。
北斗を転落させたのもよくわからないし、ただの侵略宇宙人にしか見えない。
新マンのBGMが多く使われてたのでエースというよりは新マンという感じのストーリーだった。
異次元の世界も出てこなかったし。

北斗が出撃するシーンでエースのテーマが。
勇ましいムードがしてよかったが、ちょっと唐突に感じた。
新マンのベムスターの回を思い出した。
石油タンクをもぎ取って超獣にぶつけるエース。
周りにオイルが漏れて危ないよ。
まあ、毎回街中で超獣を大爆発させてるわけだから大したことではないのかもしれないが。

今回は何と言っても美川隊員でしょう。
浴衣にミニスカ。
ファンサービスオンパレードでした。
山際監督ありがとう。
しかし宇宙仮面は何処となく虫太郎を髣髴とさせる。
芸術家タイプが好みなのか。
因みに山中が幼稚園に現れたのは、美川に気があって心配して見に来たのではと勝手に妄想してる。
美川隊員にはああいう男気のあるタイプが合うと思うのだが。

今回は上原氏のエース最後の脚本。
市川氏によると、夕子が帰ったことでボツになった題材があるとのことなので、まだ他に題材があったのかもしれないが、最後に相応しい上原氏らしいいい脚本だったと思う。
エースの世界観と言うよりは新マンの世界観に近いが、エース初期は新マン中期の主従を入れ替えただけで実質同じコンビなので基本的に同じ作品と言っても差し支えないだろう。
この2人が脚本家として素晴らしい才能を発揮してくれたおかげで、この時期のウルトラが非常に魅力あるものになったと思う。
もちろん初代の巨人、金城氏とは比べるべきではないが、金城氏が作ったウルトラを引き継いで大きくさせたのは何と言ってもこの2人の功績大であろう。
この2人を引き継いだ田口氏はちょっと荷が重かったと思う。
それでも孤軍奮闘でタロウ、レオを作り上げた功績は賞賛に値するが。
個人的には最も好きなこの時期。
上原さんの降板は非常に残念な出来事だったと思う。

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