銀河に散った5つの星


データ

脚本は市川森一。
監督は吉野安雄。

ストーリー

瀕死の重傷を負った北斗と南だがTACの人口太陽光線で何とか一命を取りとめる。
その頃国際本部から高倉司令官が超光速ミサイルNO.7の設計図をもってTAC基地へやって来た。
長官はゴルゴダ星の爆破を指令。
ウルトラ兄弟の救出を優先すべきと反論する北斗であったが、地球の安全が第一と一蹴される。
TACは命令どおり5日後の七夕の日までにNO.7を完成し、ゴルゴタ星の破壊を決行することにする。
その頃ゴルゴダ星ではヤプールが作り出した悪魔の申し子エースキラーが出現していた。
ウルトラ兄弟達からそれぞれの必殺技のエネルギーを吸収するエースキラー。
そしてヤプールは実験台としてエースとほぼ同等の力を持つエースロボットを地下から出現させる。
エースロボットはエースキラーの敵ではない。
メタリウム光線は跳ね返されウルトラ兄弟の光線技に苦しめられるエースロボット。
最後はM87光線でエースロボットは粉々に吹っ飛ばされた。
勝ち誇るエースキラーに呆然とする兄弟たち。
一方地球ではNO.7が遂に完成していた。
長官は乗員に北斗を任命する。
北斗の気持ちを思いやった山中は代わりに行くことを申し出るが、北斗の決心は固かった。
七夕の日、NO.7に乗り込む北斗に南は自分の手でエースの兄弟を殺すのかと問う。
それに答えて北斗は他人には殺させたくないと言う。
決心した目で南を見つめる北斗。
かくしてNO.7は打ち上げられた。
順調に大気圏を突破したNO.7であったが急造であったため、ロケットが切り離せなくなる。
長官はそのまま突入を命令。
しかし竜隊長は上官の命令に背いて帰還を指示する。
規律違反は許さないと長官。
しかしTAC隊員の命を預かるのは自分だと毅然とした態度で竜は反論する。
それでも突入を指示する長官を竜は殴り飛ばす。
しかし北斗はウルトラ兄弟とともに死ぬ覚悟で突入すると返信。
南は激昂し長官に帰って下さいと詰め寄る。
同様に怒りを爆発させた隊員たちは長官を追い出そうとする。
そこに緊急警報が鳴った。
超獣バラバの出現。
北斗の説得は南に任せて出撃する隊長ら。
北斗と南は無線機で話し合った。
北斗の姿を見てると夕子。
その時奇跡的にリングが光った。
手を差し出してと夕子。
モニター越しに変身したエースはNO.7を破壊。
ゴルゴダ星へ兄弟たちと死ぬ覚悟で到着する。
そこへエースキラーが現れた。
エースロボット同様、メタリウム光線を跳ね返され兄弟たちの光線に追い詰められるエース。
しかしその時兄弟たちの最後の切り札、スペースQのエネルギーがエースへと集められた。
エースキラー目がけスペースQを放つエース。
エースキラーは見事大爆発。
兄弟たちはヤプールによるゴルゴダ星の爆破を辛うじて逃れ、エースは再び地球へ帰ってきた。
今度は放射能の雨もなく優勢に戦うエース。
最後はバラバの鎌で首を落としヤプールの野望を完全に打ち砕いた。
七夕の夜、北斗と南の誕生パーティーを開くTAC隊員たち。
外に出た北斗と夕子は空を見上げながら織姫と牽牛について話していた。 織姫と牽牛は恋人同士なの?
私たちは一体何なのかしら?
夕子の言葉に戸惑う北斗であったが、2人の顔には笑顔があった。

解説(建前)

まずゴルゴダ星爆破の理由がよくわからないが、ヤプールの本拠地と睨んでの作戦だろう。
しかし人口太陽光線といい、地球の科学力も大したものである。
エースロボットの動きはかなり緩慢。
エースと同等の能力と言うのは誇大広告の可能性大だろう。
ゴルゴダ星の戦いは全体的に緩慢。
これはゴルゴダ星の重力の問題か。

隊長が夕子に北斗のことを託したのは、やはりこの2人を特別な関係と思ってるからだろう。
ゴランの回とは逆パターンである。
ゴルゴダ星破壊後、バラバに放射能の雨の援護はなかったが、ゴルゴダ星にその装置があったものと思われる。
今回のヤプールは相当気合が入っていた。
この作戦の失敗は今後のヤプールの戦いにも大きく影響することになる。

北斗と夕子がエースになかなか変身しなかったのは、エース自身2人を巻き込みたくなかったからであろう。
個人的にあのリングはエースの意思で光ってるのだと思う。
そしてそれは北斗と南が必死に戦うことを前提としている。
エースとしても他人のためにそこまで戦いたくはない。
出来れば地球人に何とかして欲しいと思ってるのだろう。
前回ウルトラサインでリングが光ったのはエースの個人的事情からだろう。
しかし今回ゴルゴダ星へ行くのは死にに行くのと同じなので、エースは変身を躊躇ったのではないか。
結果的に北斗は死ぬ覚悟を固め、夕子も一緒に死ぬ覚悟を決めたからこそ(もちろん北斗を助けたい気持ちの方が大きいが)変身できたのだと思う(でなければ、エースが兄さんたちと一緒に死のうなどとは言えまい)。

兄弟たちのエネルギーの無尽蔵ぶりは謎だ。
スペースQのエネルギーはいざという時のために別口で取ってあったのだと思うが、その後脱出時のエネルギーはどうしたのだろうか。
もしかして、サボテンダー同様爆発エネルギーを吸収したのかもしれない。
ゴランの時といい、星の爆発エネルギーはウルトラ兄弟のエネルギーたりうる性質を持っているのであろう。
それでも磔のまま何日も(1週間弱か?)タイマーが点灯してた兄弟たち。
これはやはり宇宙と地球では違うということだろう。
地球で全滅した時はあっさりカラータイマーが消えていた(ゴランの時のエースも同様)。
ゴルゴダ星では微量ながらもエネルギーを補充でき、最後は星の爆発を利用してゴルゴダ星を脱出できたものと思われる。
この話は難しいのでこれくらいにしておく。

エースはゴルゴダ星から地球に帰還してもエネルギーが全然切れず、タイマーは青のままだった。
これは宇宙空間でたっぷりエネルギーを補充してきたことによるのだろう。
5話のゾフィといい、宇宙空間ではエネルギーの補充効率が高いようだ。
そう考えると、地球は住みづらいのだろう。
だから人の体を借りたり、人に変身したりしてエネルギーの消費を抑えてるものと思われる。

最後に伝説のモニタータッチだが、あれは要するに2人の変身は物理的に近くいる必要はないということなのでは。
私見では変身の瞬間は異次元空間にいるので、ウルトラタッチはそこに行くための手段なのだろう。
2人の心が通じ合えば、離れていても異次元空間を通ってエースに合体できるのだと思われる。
今回は北斗を死なせたくないという夕子の思いが2人の気持ちを1つにしたのだろう。
もう1つ、北斗がどうやって帰還したかはエースに助けられたと言うしかあるまい。
ウルトラシリーズでは避けて通れない言い訳である。

感想(本音)

殺伐とした前篇の展開に比べて、非常にロマンチックかつファンタジーな話に仕上がっている(ウルトラシリーズでも随一では?)。
北斗と夕子の関係も1つの頂点を見た格好だ。
反面ウルトラ兄弟の話は脇へ行ってしまいヒーローものとしてこれでいいのかという疑問も付きまとう(エースキラーはあっさりやられたし)。
また子供向けとしては2人の関係をこれ以上発展しづらく、その辺もエース路線変更の一因となったのではないか。

今回の話、完全に北斗、南メインである。
主役なので別にいいと思うが、内容は2人(特に夕子)の恋愛という点、ヒーローものの限界を感じさせる。
あのモニタータッチは子供心に不思議だった。
しかしあれは牽牛と織姫に2人をなぞらえたのだろう。
離れていても心が通じ合う2人。
しかしそれは七夕だけの奇跡なのか、2人には物理的な壁は関係ないのか。
市川氏が何を意図したかはわからないが、夕子が月に帰ることにより結果的に七夕の奇跡になってしまった。
だが、それは子供向けヒーロー番組である以上仕方なかったのかもしれない。

見えるはずのない北斗の姿が見えた夕子。
そのことに夕子は改めて自分の北斗への想いに気付かされたのだろう。
それが最後のセリフにつながったのではないか。
一方北斗には夕子の姿は見えたのだろうか。
その辺番組では語られていない。
2人の気持ちが通じ合ったことから、北斗が手を伸ばした瞬間に見えたと考えることにしよう。
しかし離れていても心が通い合えば変身出来るという設定は、今後の展開にも使えたであろうに。
そういう展開に持っていけば合体変身はかったるいという話にならなかったのではないか。
まあ、あまりそっち方面へ話を広げると子供向けを逸脱する虞があるが。

今回北斗はウルトラ兄弟を自分の兄弟のように思っていた。
一方夕子はゴルゴダ星爆破の指令にもそれほど動揺せず、隊長の指示に素直に従っていた。
これはやはり北斗とエースの関係に比べ、夕子とエースは繋がりが薄いことを示唆しているのであろう。
ウルトラ兄弟と命をともにしようとする北斗と、北斗を命がけで想う夕子。
少年やウルトラ兄弟の兄弟愛が話の縦糸なら、夕子の北斗への愛は横糸といったところか(横糸の方が目立ったが)。

北斗と夕子はそれくらいにして、今回はウルトラ兄弟のタフネス振りがかなり目立った。
やっぱりウルトラ兄弟は不死身だね。
こう考えると、地球にいる時が1番弱いのかもしれない。
しかしエネルギーを取られてがっくりする演出は如何なものか。
ああいうのも1期ファンには不興を買うんだろうな。
エースロボットとエースを対比する演出はなかなか良かった。
ロボットとは言え、エースが粉々に吹っ飛ぶのは子供心にかなり怖い。
高倉長官は酷い奴だったな。
北斗を任命したのも北斗なら死んでもいいと考えたからだろう。

今回の山中はかなり好感度高かった。
竜隊長しかり。
しかし今回TAC隊員が北斗と夕子の関係を恋人とは見てないことが判明。
ただ、兄弟のように仲のいい2人という認識はあるようだ。
う~ん、出発する北斗を追いかける夕子といい、みんなは何を見ているのか?
せめて隊長だけはもっと深い(精神的にね、もちろん)関係だと思っててくれ。

しかし夕子の命を賭けた変身に夕子の崇高な愛を感じる。
やはり市川氏の描く夕子の愛は宗教的なニュアンスが濃い。
上原氏の描く現実的な愛とはその辺り雰囲気が違うだろう。
今回、男女の恋愛という面では大幅に話を動かした市川氏(特に夕子の最後のセリフ)。
それはエースのメインテーマである以上、チーフライターとしては当然であろう。
しかしこの後、市川氏はエースの脚本から離れてしまう。
その辺の経緯はわからないが、市川氏自身、エースへの情熱が薄れていたのは確かなようだ。

夕子の必死な姿といい、少々強引なストーリーでも爽やかな感動があるいい話に仕上がったと思う。
ファンタジックな締めは市川氏面目躍如である。

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